商法(運送法・海商法)の改正ポイント

今年5月に成立した商法改正が2019年半ばに施行される予定です。条文がひらがな表記になり見易くなるのですが、それ以上に運送時の荷主、運送業者、荷受人等の関係者の利害関係を明確にするための改正です。契約書、リスク管理、業務手順等に影響がでると思われますので、社内での確認をしていただき、必要な場合は専門家への相談をお勧めします。

利害関係者は以下の三者です。

  • 荷送人 運送人に運送を依頼する荷主または運送取扱人
  • 運送人 運送の引受けを業とする者
  • 荷受人 運送された物品を受けとる者

改正のポイントは以下の通りです。

①危険物に関する荷送人の通知義務が明文化されました。

(現行)規定なし

(改正後)荷送人に通知義務が課され、過失がある場合には損害賠償を請求される場合があります。任意規定です。

②高価品の損害についての運送人の責任が変更されました。

(現行)高価品であることを知らされていない場合は免責され賠償責任なし

(改正後)運送人が高価品であることを知っていたとき、運送人の故意や重過失により損害が生じたときなど、運送人が賠償責任を負う場合があります。任意規定です。

③荷物の滅失損傷に対する運送人の責任期間が1年に短縮されました。

(現行)国内の場合5年で時効

(改正後)運送人が物品を滅失等したとき、荷受人が受け取ってから1年で運送人の責任は国内外を問わず消滅します。

ただし、国際航空貨物はモントリオール条約などにより2年です。

また、クレーム期間については外航運送で3日以内(国際海上貨物運送法)、内航運送で2週間以内(商法)または各契約・約款で別途規定されています。

④全部滅失の場合でも荷受人の損害賠償請求が可能になりました。

(現行)一部でも荷物が届かなければ請求権なし。

(改正後)運送人が物品を全部滅失し届かない場合も、荷受人は運送人に損害賠償請求ができます。任意規定です。

ただし、荷受人が損害賠償請求をしたときは、荷送人は請求できなくなります。

⑤ほかに以下のような新設・変更があります。

  • 国内航空運送や複合運送に関する規定が新設されました。
  • 航海に耐えうる船を用意する船主の義務が無過失責任から過失責任に変更されました。
  • 船舶先取特権に関して、人命・身体障害に係る債権が上位になるなど、対象範囲と順位が見直されました。
  • 船舶・傭船・船長・海難救助等に関する規定、旅客運送に関する規定が見直されました。
  • 運送人の契約責任規定が不法行為責任に準用され、損害賠償請求基準が統一されました。

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