〈民法改正メモ-06〉請負契約

改正の概要
  1. 仕事の全部が完成していなくても、請負人が請け負った仕事が可分であり、既履行部分の給付によって注文者が利益を受ける場合は、利益割合に応じて報酬請求できることが明文化されました。
  2. 請負契約に特有であった瑕疵補修請求権の行使要件が削除されました。
  3. 建物その他の工作物の請負契約を解除することが可能になりました。
  4. 仕事の目的物が契約内容に適合しない場合に注文者が権利行使するには、「知った時から1年以内にその旨を請負人に通知」することが要件となりました。また、注文者の請求内容は、売買と同様に、履行の追完、報酬の減額、損害の賠償及び契約の解除とされました。
  5. 土地の工作物について長期に担保責任を負わせる従来の規定は廃止され、請負人の責任の存続期間は上記4となりました。
  6. 改正民法では、注文者が破産手続きの決定を受けた場合に請負人が契約を解除できるのは、請負人が仕事を完成していない間に限られます。
実務への影響
  1. 工事や作業が長期間に渡りかつ契約金額が多額になるソフトウエア開発や大型の建築の契約においては、作業や工事の各ステージに対応して報酬額と支払時期を設定するなどすることにより、出来高毎の報酬額を明確にすることが大切です。また、見積書を作成する際に、契約書と同様に出来高と報酬の関係を明らかにしておくことも良いと思われます。
  2. 旧民法の下では、請負契約において重要な瑕疵がある場合は過分の費用を必要とする場合でも、注文者は請負人に対して修補の請求をすることができました。しかしながら、改正民法では請負にも売買の担保責任に関する規定が準用されることとなり、旧民法634条1項ただし書は削除されていますので、このような過分の費用を必要とする場合の修補請求は難しくなると思われます。
  3. 請負人の過大な負担となり又社会経済的にも大きな損失となることから、建物その他の土地の工作物を目的とする請負契約は解除できないものとされていました。しかしながら、土地の工作物であっても瑕疵のために契約の目的が達成することができないことを考慮すると、契約解除の一般原則の例外とする合理性がなく、改正民法では、建物その他の土地の工作物であっても解除が認められる場合があることとなりました。契約の目的を達成することができるか否かをはっきりさせるために、契約の趣旨、目的、内容を従前より明確に記載することがより重要になると思われます。
  4. 注文者にとっては、改正民法により、下記の通りその権利行使の負担が従前よりも相当軽減されました。なお、請負人としては、請負契約に期間制限に関する特約を規定することを検討すべきと思われます。
    • 起算点が、従前の「引き渡した時から1年以内(引き渡しがない場合は、仕事が終了した時から1年以内)」から、改正民法では、「注文者が知った時から1年以内」となりました。
    • 1年以内に注文者がすべきことが、従前は、瑕疵の内容と請求する損害額の算定根拠を示すなどする必要がありましたが、改正民法では、仕事の内容が不適合であることを通知さえすればよいこととなりました。
    • なお、請負人が仕事の目的物を引き渡した時に、それが契約の内容に適合しないことについて悪意(=知っていた)又は重過失により知らなかったときは、請負人の保護は必要ないため、上記期間の適用はありません。
  5. 注文者は、契約の内容に適合しない状態を発見したときには、1年の起算点を明確にするために、その内容や発見日を明確にするための証拠を保存した上で、速やかに請負人に対して通知することが大切になります。なお、一般の新築住宅の場合は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の第95条1項によって、引き渡しから10年間責任追及が可能です。
  6. 請負人が仕事を完成させている場合には解除権を認める必要がないため、改正民法によって請負人の解除権は仕事を完成させない間に限定されました。実務的な影響は特にないと思われます。

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