〈民法改正メモ-07〉委任契約

改正の概要

  1. 委任契約にも代理と同様の規定が置かれ、受任者は、委任者の許諾を得たとき、または、やむを得ない事由があるときでなければ、副受任者を選任できないことが明記されました。
  2. 委任事務の履行によって得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合は、報酬はその成果の引渡しと同時に支払われなければならないという規定が新たに設けられました。成果の引渡しを要しない場合は、旧民法から変更はなく、成果の完成後に支払えばよいです。また、成果完成型の委任契約は、仕事の完成を目的とする請負契約と類似しているため、報酬支払規定は請負契約の規定を準用しています。しかしながら、成果完成型の委任契約には各当事者がいつでも解除できる旨の規定があり、担保責任条項についての規定がない、など請負契約とは異なる部分があるので注意が必要です。
  3. 委任が履行の途中で終了したときに、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるのは、旧民法では受任者に責任のない事由によって終了した場合に限られていましたが、改正民法では受任者の責任の有無を問わないこととなりました。
  4. 当事者はいつでも委任契約を解除することができる原則は変わりません。やむを得ない事由があるときを除いて委任者が損害賠償責任を負う場合が、従来の、相手方に不利な時期に解除した場合に加えて、委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除した場合も追加されました。

契約実務への影響

  1. 委任契約や準委任契約において委任事務の履行に第三者を使用するケースは多くあります。委任事務において第三者を使用する場合の規定をあらかじめ契約書に記載しておくことが必要です。
  2. 本条項は任意規定です。よって、報酬先払いなどの合意もできます。先払いをしたのに約束した成果が得られない場合は、不当利得返還請求によって支払った報酬の返還を求めることになります。先払いの合意をするときは、成果が得られない場合の返還規定を定めておくべきだと思われます。
  3. 履行の割合に関する争いを避けるために、出来高に応じた報酬額及びその支払時期を設定して、契約書に記載しておくべきだと思われます。
  4. 任意解除した場合の損害賠償義務の有無及びその額について争いになるおそれがあります。契約書を作成する際には、解除権を制限したり、あらかじめ損害賠償額を規定したりしておくのが良いと思われます。

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